「薬剤師なんていらない」と言われてしまう理由

Pharmacist
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PharmaXというオンライン薬局のスタートアップで薬剤師・エンジニアとして働いています。Rails・React・TypeScriptなどを書きます。英語が得意でTOEIC900点・通訳案内士資格取得。主に薬剤師の働き方やプログラミング、英語学習について書きます。当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。
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インターネットを徘徊していたら、ちょっと古いけど以下のような記事を見つけました。

 

薬剤師からすると、「いや、政治力めっちゃ弱いんだが。。」とタイトルを読んだ時点でツッコミたくなる記事なのですが、要約すると「薬剤師いらなくね?」という話が展開されています。

 

インターネット上では、このような薬剤師不要論をちょくちょく見かけます。

こういった意見をみて、落ち込んでしまう薬剤師も多いのではないでしょうか。

 

そこでこの記事では

  • なぜ薬剤師いらないと言われてしまうのか

について思ったことを書いてみました。

 

僕は現役の薬剤師なのでバイアスがかかった意見かもしれないですが、興味があれば読んでみてくださいませ。

 

「薬剤師なんていらない」と言われてしまう理由

 

なぜ「薬剤師なんていらない」と言われてしまうのか。

僕は2つ理由があると思っています。(政治的な理由もあると思うけど今回は除外)

理由1:薬剤師の仕事が目立ちにくい

薬剤師の仕事は目立ちにくいです。

 

この前Webエンジニアから話を聞いたのですが、サーバー保守の仕事はちゃんとした評価をされにくいんだとか。

 

なぜかというと、ユーザーからするとWebサービスは動くのが当然だからです。

 

以前、ポケモンGOというゲームで、3時間だけレアなポケモンが大量発生するというイベントがありました。

 

そして、案の定アクセスが集まりすぎてサーバーが落ちてしまいます。

 

その結果どうなったかというと、ポケモンGO公式アカウントには激怒したユーザーから、これでもかというくらいひどい言葉が投げつけられていて完全に地獄と化していました。

x.com

サーバー保守の仕事は、薬剤師の仕事と少し似ているなと僕は思います。

 

薬剤師も鑑査という重要な仕事をしていますよね?

 

けど、鑑査をちゃんとやっていても薬物治療が順調に進むだけなので、基本的に薬剤師の仕事に陽が当たることはありません。(すべて医師のおかげになりがち)

 

鑑査だけではなく、薬剤師の仕事は目立ちにくく地味なものが多いです。

 

そのため

「えっ、薬剤師とかいらなくね?」

という論調になりがちなのかなと。

 

理由2:薬剤師との距離感が遠い

ふだん薬剤師との接点をあまり持たない人が、表面的なことだけを見て「薬剤師いらない」と言っていることは意外と多いです。

 

特にネット上では、「薬剤師いらない」という意見を見かける機会が少なくありません。

 

社会的地位の高い職業の1つに弁護士があります。

しかし、いくら社会的地位が高いと言っても、日本人の多くは弁護士のお世話になったことがないでしょう。

 

僕も弁護士のお世話になったことがないので、弁護士が僕にとって必要な仕事かと言われると微妙に感じます。

 

正直、僕にとってはAmazonで注文しや商品を運んでくれる配送業者の方がよっぽど重要な仕事です。

 

でも、法的な争いごとを抱えている人にとって、弁護士は非常に心強い味方となってくれます。

 

何が言いたいかというと、

「人によってその職業に対する重要度は大きく異なる」

ということです。

 

ある程度の関係性がないと、その職業に対する価値って感じにくいんじゃないかなと。

 

例えば、薬をたまにしか飲まない若い世代や健康な人が薬剤師に対して必要性を感じるかというと、かなり怪しいですよね?

 

インターネットユーザーの年齢層は基本的に低いです。

それゆえ薬剤師との接点が少なく、「薬剤師いらない」という声が大きくなりがちなのかなと思います。

 

「薬剤師なんていらない」という主な意見に対して思うこと

 

「薬剤師いらない」という意見には、いくつか種類があります。

なので、「薬剤師いらない」という代表的な意見に対して僕が思ったことをまとめてみました。

 

不要論1:薬剤師は袋に薬を詰めているだけ

「薬剤師は袋に薬を詰めているだけ」

これが1番よく聞く批判だと思います。

 

けど、実際は袋に詰めているだけではなく、「処方内容に不備がないか」をチェックしているので、完全に間違っている意見です。

 

「医師は間違えない」と考えている人は多いのですが、実際はそんなことありません。

薬剤師であれば、毎日のように医師へ問い合わせしています。

 

決して袋に薬を詰めているだけのお気楽な仕事ではないのです。

 

不要論2:薬剤師の仕事はAIがやればいい

「薬剤師の仕事はAIがやればいい」

という意見もよく聞きます。

 

この意見に関しては「たしかに一理ある」と思っていて

  • 薬の調剤
  • 処方せんのチェック

などは人間がやらない方が良いでしょう。

 

もっと過激な意見としては、

「スマートスピーカーで薬の説明もやれば良い」

というものまであります。

 

この意見に関しては、

「それはまだまだ無理じゃね?」

と個人的には思っています。

 

なぜかというと、AIは言葉の意味を理解できないから。

 

詳しくは以下の記事を読んでほしいのですが、AIは統計学的処理をして「統計的に正しい回答」をしているに過ぎません。

 

 

行間を読めないと服薬指導の仕事はできないので、今のところ人間じゃないと務まらないと思います。

 

さらに言えば、スマートスピーカーによる服用指導で何かしら事故が起こった場合の責任の所在もあやふやです。

 

ドラえもんみたいなロボットが開発されれば話は別ですが、

「服薬指導の仕事は薬剤師がしばらくやることになる」

というのが僕の意見です。

 

不要論3:薬剤師は不要な仕事だから規制に守られている

「薬剤師はいらない仕事だから規制に守られている」

という意見もよく聞きます。

 

冒頭で紹介した記事には、こんなことが書かれていました。

 

「薬剤師がいないと薬を売ってはいけない」という規制を守ることは、彼らの生命線である。

ネット販売を許したら、スーパーでもコンビニでも自由に薬が売られるようになり、価格競争が始まったら既存の薬局は勝てない

 

薬剤師は資格職である関係上、規制に関する話は多岐にわたるので、この記事では市販薬のネット販売に絞りますが、この件に関してはどのような政治思想を持っているかで正しい答えが変わってくるように思います。

 

規制を敵視する熱心な自由主義の信奉者であれば、薬剤師の規制を排除して全ての市販薬をネット販売することは正義となるでしょう。

 

しかし、「薬剤師がいないと薬を売ってはいけない」という規制が完全になくなって、市場原理に市販薬が完全にさらされた場合、「広告費をたくさんかけた薬が良い薬」となったりはしないでしょうか?

 

たしかにネット販売の利便性は高いですが、果たしてそれがベストな選択なのかと言われるとかなり疑問です。

 

薬剤師はいらない職業ではないと思う

 

「薬剤師はいらない」という意見もありますが、個人的にはそんなことないと考えています。

患者に薬の相談をされたことがない薬剤師はいない

薬剤師なら、

  • 薬の飲み合わせが分からないから教えてほしい
  • お医者さんには言えなかったんだけど。。。
  • 市販薬で良いやつない?

こういった相談を受けたことがあると思います。

 

じゃあ、なぜこんな質問をされるのか。

普通に考えて薬剤師が必要な仕事だからだと僕は思うんですよね。

 

薬剤師が本当に必要とされていなら相談なんてされると思いますか?

どう考えてもされないですよね。

 

「薬剤師いらない」という意見は、この事実があるだけでちゃんと否定できると思います。

 

「薬剤師いらない」と言う人が一定数いるのは仕方ない

「薬剤師いらない」と言う人が一定数いるのは仕方ありません。

 

どんなに頑張って結果を出しても認めてもらえないことなんて世の中にはたくさんありますし、先ほども書いた通り、薬剤師との接点が普段からどれくらいあるかによっても印象が変わってくるからです。

 

ある人にとって薬剤師は必要だけど、またある人にとっては薬剤師なんて不要ということは十分あり得ます

 

人間はポジティブな意見よりも、ネガティブな意見に対して敏感に反応してしまう生き物です。

 

実際に薬剤師として働いていて、文句を言われる回数よりも「ありがとう」と言われる回数の方が多くないですか?

 

このように考えると、「薬剤師いらない」というのは少数派の意見なのは明確です。

 

なので、落ち込む必要なんてないですし、これが多数派の意見にならないよう普段の仕事を頑張った方が生産的でしょう。

 

これからの薬剤師が力を入れていくべきこと

 

最後にこれからの薬剤師が力を入れていくべきことについて。

 

日常的な業務ももちろん大切ですが、薬剤師はもっと「ちゃんと仕事してますアピール」をすることに力を入れていくべきなんじゃないかと僕は考えています。

 

他人の仕事なんて誰も興味はない件

基本的に、他人の仕事なんて誰も興味はありません。

だからこそ、「ちゃんと仕事しています!」としっかりアピールする必要があります。

 

例えば、おいしいレストランが潰れてしまうなんてことは珍しくありません。

「おいしい料理を提供する」という仕事をしているにも関わらずです。

 

要するに、おいしい料理を提供するだけではダメなんですね。

 

おいしい料理をお客さんに提供する前段階として、レストランの存在をアピールしていろんな人に知ってもらう必要があるのです。

 

これは薬剤師にも言えることなんじゃないかなと。

アピール不足であるがゆえに「薬剤師は袋に薬を詰めているだけ」なんて言われちゃうと思うんですよね。

 

ちゃんと仕事をしていたとしても、アピールしなければ誰も気づいてくれません。

 

「黙って良い仕事をする」というスタンスは日本的で美しいのかもしれないですが、明らかにデメリットの方が大きいです。

 

批判的な意見に耳を傾けるのも重要

もちろん批判的な意見に耳を傾けることも重要です。

 

例えば、冒頭で紹介した記事に「薬剤師の業界は生産性が低い」という指摘がありましたが、これはもっともな意見かなと。

 

生産性に関しては、改善の余地がかなり大きいと思います。

 

この前、プログラミングの勉強会に参加したのですが、薬剤師をやっているという話をすると「電子お薬手帳を使える病院とか薬局がもっとあれば便利なんですけどね。少なすぎじゃないですか?」という意見をもらいました。

 

21世紀だというのにいまだに紙の薬歴を使っているという話を聞くくらい、この業界はIT化が進んでいおらず、生産性に無頓着と言われても仕方ない状況だったりします。

 

ちゃんと仕事してますアピールをすると同時に、批判を真摯に受け止め仕事の質を上げていくことが、薬剤師不要論を減らしていくことにつながるのではないでしょうか。

 

まとめ

人によって価値観は違うので、「薬剤師いらない」と言う人が一定数いるのは仕方ありません。

 

どんな職業に対しても「不要だ」と主張する人はいるのだから、ネガティブな意見は過度に気にしない方が良いです。

 

個人レベルでもやれることはたくさんあると思うので、コツコツ頑張っていきましょう。

では。