ここ数年、
「AI(人工知能)が仕事を奪う!」
みたいな類のニュースがかなり増えてきました。
技術革新によって多くの仕事がなくなってきた歴史があるので、AI(人工知能)は話題になりやすいのでしょう。
そこでこの記事では、
- 薬剤師の仕事は人工知能(AI)によってなくなってしまうのか
についてまとめてみました。
この記事を書いている僕は、薬剤師もやりますし、プログラミングの知識もそこそこあります。
なので、多少は参考になるかなと。
では本題へ!
そもそもAI(人工知能)とは何か?
最初に
「そもそもAI(人工知能)とは何か」
について簡単に解説します。
AIの核となる技術は”機械学習”
AI(人工知能)の核となる技術は、「機械学習」と呼ばれています。
簡単に言うと、大量のデータを解析して
- 規則性
- 法則性
- 類似性
を見つける技術です。
iPhoneに搭載されているSiriを例に挙げて説明します。
例えばSiriに
「おいしい中華料理屋さんを教えて!」
と伝えたとしましょう。
このように伝えると、Siriは現在地から近い中華料理屋さんの候補を教えてくれるわけです。
どんな仕組みかというと、文章に出てくる単語の組み合わせから「こんなことを聞かれているのだろうな」というのを推測して、統計的に正しい可能性の高い回答をしてくれています。
先ほどの例だと、「おいしい」・「中華料理」というワードが入ってたら、「評価の高い中華料理屋さんについての検査結果を返す」のが統計的に正しい回答というわけです。
“おいしい”・”中華料理”というワードが入っている
↓統計的に正しい回答を探す
Siri「おいしい中華料理屋さんは、ABC中華料理店です。」
道端で知らない外国人に、片言の日本語で「美味しい、中華料理」と言われたら、「たぶん、この人は美味しい中華料理屋さんに行きたいんだな」って何となく分かりますよね?
イメージとしてはそんな感じで、AI(人工知能)はそれを精度高くやっているのです。
Siriに話しかける人が多ければ多いほど、統計元となるデータは大きなります。
その結果、回答の精度が高まっていくというわけですね。
これが機械学習です。
有名なAI(人工知能)の紹介
次に有名なAI(人工知能)の紹介をします。
Google翻訳
Google翻訳は説明不要だと思いますが、最近かなり翻訳の精度が高まっていることをご存知でしょうか?
これは機械学習のおかげです。
Google翻訳では、日本語の文章とそれに対応した英語の文章を大量に用意し、「Aという日本語が入力されたら、それに対応したBという英語へ翻訳する」というアルゴリズムを使って、統計的に正しいと思われる翻訳を表示しています。
AlphaGo
AlphaGoも有名なAI(人工知能)です。
囲碁のような非常に複雑なゲームで、AI(人工知能)が世界的なトッププロのイ・セドル9段に4勝1敗で勝利したことが話題になりました。
これも莫大な量の棋譜から統計的に正しい打ち手を学習した結果です。(それにプラスして、AlphaGo同士で対局させ超高速で学習させたようです。これを強化学習と言います。)
Emmy
AI(人工知能)はクリエティブな仕事はできないと言われていますが、実は作曲できるAI(人工知能)もすでに登場しています。
それがEmmyです。
聴衆300人が3つのピアノ協奏曲を聞き比べ、「どの曲がバッハの曲かを当てる」というイベントで、聴衆の多くが人工知能Emmyが作った曲を「バッハが作曲した」と判定しました。
大量の楽曲を学習することによって、Emmyは「統計的にバッハっぽい曲」を作れるようになったのです。
AIに奪われる薬剤師の仕事・奪われない薬剤師の仕事
では、AI(人工知能)によって、薬剤師はどんな影響を受けるのでしょうか。
個人的には、奪われやすい仕事・奪われにくい仕事に大別できると考えています。
AIが得意な仕事は数式で記述できること
先ほど、いくつか有名なAI(人工知能)を紹介しました。
では、これらの共通点は何か。
それは、数式で記述できる仕事が得意ということです。
例えば、Google翻訳は大量の英文を用意して、統計的に正しい翻訳をはじき出しています。
統計学の世界なので、当たり前ですが数式で記述できるというわけです。
逆に言うと、数式で記述できないことはAI(人工知能)は苦手です。
要するに、
- 言葉の意味を理解する
- 空気を読む
みたいなことはできません。
「私はあなたのことが好きです」を数式で記述できると思いますか?
どう考えても無理ですよね?
「表情と発する言葉から、患者の本音を推測する」
なんてことも数式で記述するのは難しいことは、直感的に分かるでしょう。
説明するまでもないと思いますが、Google翻訳は言葉の意味を理解して翻訳しているわけではないのです。
あくまでも、統計的に正しそうな翻訳をデータから取り出しているだけです。
これでAI(人工知能)に奪われる薬剤師の仕事・奪われない仕事が、だいたい予想がつくかと思います。
AIに奪われる可能性のある薬剤師の仕事
まず調剤・鑑査は、薬剤師の手から離れていくと思います。
というか、調剤に関してはAI(人工知能)以前の話かなと。
調剤補助員がピッキングをできるようになりましたし、なし崩し的に水剤・粉薬などの調剤に関しても薬剤師がやらなくなるでしょう。
鑑査は、AI(人工知能)に過去の莫大な量の処方を機械学習させ、「何かしら問題があればアラートで知らせる」というシステムの構築が十分可能だと思います。
画像認識・解析もAI(人工知能)が得意な分野なので、鑑査は人間がやらなくなるはずです。(というか人間がやると危ない)
懸念点としては、「プライバシーの問題」や「政治的な問題」があるということです。
過去の処方を機械学習させるとなると、「プライバシーの問題が!!」と騒ぐ人も絶対にいます。
そして資格が必要な仕事は規制産業なので、自分の仕事を守るために何かしらの理由をつけて激しく抵抗するでしょう。(Uberとタクシー業界みたいな感じで)
したがって、AI(人工知能)に奪われそうな仕事と言っても、まだまだ先の話になるというのが僕の見解です。
AIに奪われにくい薬剤師の仕事
逆に対人業務は、AI(人工知能)に奪われにくいです。
具体的にいうと、在宅医療などの分野ですね。
先ほど、
「AI(人工知能)は言葉の意味を理解できない」
と書きました。
なので、コミュニケーションが必要な仕事には薬剤師がどうしても必要になってきます。
薬剤師として働いていたら、表情から患者の気持ちを察したり、行間を読んで解決策を提案することの大切さを体感的に分かっているのではないでしょうか?
これらは言葉の意味を理解できないAI(人工知能)にとって苦手なことです。
したがって、コミュニケーション能力が必要な仕事は、もっともAIに代替えされにくいと言えます。
しかし、奪われない可能性が高いと言っても、奪われる可能性はあります。
あくまでも、調剤・鑑査に比べたら奪われにくい可能性が高いというだけです。
例えば、家族や友人、恋人に相談しづらいことをGoogleの検索タブに打ち込んだことがあるのは僕だけじゃないでしょう。
何が言いたいかというと、
- 相手が人間じゃない場合は本音を言わないインセンティブが働かないので、行間を読んだり・空気を読む必要がなくなる
ということです。
仮に、あなたは人種差別主義者だとします。
記名式アンケートで「あなたは人種差別をしますか?」と聞かれたら、正直に「Yes」と回答できますか?
たぶん、人目を気にして無理なんじゃないかなと。
けど、Googleの検索タブであれば話は別です。
欲しい情報を得るために、自分の思想・嗜好を正直に打ち込めるでしょう。
要するに、人間に優位性のある「行間を読む」力が必要なくなる可能性もあるということです。
特に医療の分野は「知られたくないこと」も多いと思います。
十分なデータ集まりそれを実用化できれが、「人間に相談するより、スマートスピーカーに相談しよう」と考える人は多くなるはずです。
したがって、現時点では対人業務はAIに奪われにくいと考えられていますが、遠い未来では取って替わられるかもしれません。
ただし、先ほども書いた通り、プライバシーの問題や政治的な問題、さらには技術的な問題もあるので、少なくとも数十年は先の話ではないかなというのが僕の考えです。
薬剤師の仕事は人工知能に奪われる可能性が低いとする論文もある
イギリスのオックスフォード大学が発表した“The Future of Employment”という有名な論文があります。(ちなみにイギリスの論文ですが、なぜか調査対象はアメリカ)
“The Future of Employment”の特筆すべきポイントは、今後、人工知能を搭載したコンピュータやロボットに奪われる可能性のある職種を定量的に割り出していることです。
この論文によると、現存する職種の47%が人工知能(AI)によって奪われるようですね。
ちなみに“The Future of Employment”では薬剤師についても言及されており、薬剤師が今後10〜20年で仕事を奪われる可能性は1.2%となっています。
あくまでもアメリカの薬剤師の話なので、日本の薬剤師も全く同じだとは思わないけど参考までに。
薬剤師をアップデートしてくれるのがAI(人工知能)である
ここまで色々と書いてきましたが、僕がこの記事で言いたいことは1つだけしかありません。
それは
- AI(人工知能)は、薬剤師をアップデートしてくれる
ということです。
AI(人工知能)は薬剤師をアップデートする
AI(人工知能)は薬剤師の生産性を上げます。
例えば、鑑査をAI(人工知能)がサポートしてくれるだけで、薬剤師は患者とのコミュニケーションの時間を多く取れるようになるでしょう。
人工知能(AI)は薬剤師の味方なのです。
パソコンは薬剤師の仕事を奪ったか?
以前に比べ、薬剤師の仕事にもどんどんテクノロジーが導入されています。
例えば、パソコンはその最たる例でしょう。
現場で働いている薬剤師にとって、今やPCは必要不可欠なアイテムになっています。
それが近い将来、AIも不可欠になるというだけの話です。
例えば、「パソコンは薬剤師の仕事が奪ってる!けしからん!」と言っている薬剤師がいたら、「この人、頭おかしいのかな?」と誰もが思いますよね?
大事なことなので繰り返しますが、AI(人工知能)は敵ではありません。
むしろ薬剤師の能力を拡張してくれる味方なのです。
AI(人工知能)を脅威に感じる薬剤師がやるべきこと
最後にAI(人工知能)を脅威に感じている薬剤師にオススメの対処法を紹介します。
対処法1:AI(人工知能)の勉強をする
知らないことに遭遇すると、ヒトは不安を感じるようにできています。
このような本能がプレインストールされていないと、過酷な自然環境を生き残れなかったからです。
つまり、AI(人工知能)を脅威に感じるということは、AI(人工知能)をよく知らないからとも言えます。
したがって、AI(人工知能)について学んで理解を深めれば、不安な気持ちも消えるでしょう。
人工知能に関する本を読んでも良いですし、プログラミングを学んでも良いと思います。
好みの方法で、人工知能について勉強してみてください。
本だと以下の4冊は読みやすいと思います。
対処法2:在宅医療などの対人業務スキルを磨く
2つ目の対処法が、対人業務スキルを磨くということ。
特に在宅医療の分野は、非常に良いと思います。
先ほども書いた通り、コミュニケーションが必要な仕事は現時点でAI(人工知能)が苦手とする分野だからです。
さらに言うと、高齢化社会で高齢者が増えているにも関わらず労働者が減っているので、在宅医療の需要はさらに高まると予想されます。
もし今の職場で在宅の経験をできないのであれば、今後のキャリアのために在宅の経験をできる職場に変えるのもアリでしょう。
まとめ
AI(人工知能)は、薬剤師の生産性を上げてくれる強い味方となってくれます。
なので、「過度に怖がる必要はない」というのが僕の考えです。
薬剤師の仕事をアップデートしてくれるのが、AI(人工知能)と考えれていればOKかなと。
では!